About Kilimキリムとは
中近東の雄大な自然と
遊牧民の豊かな感性が生み出す暮らしの芸術品
中近東の雄大な自然と
遊牧民の豊かな感性が生み出す暮らしの芸術品
キリムは、トルコやイラン、コーカサスなど、中近東の遊牧民の伝統的な平織り(つづれ織り)の織物です。
テント生活では主に敷物として使われたほか、毛足がないので使いやすく、間仕切りや布団、収納用袋のようにして使うなど、さまざまな用途で使われていました。
絨毯と異なり、薄くて軽く、折りたためば簡単に持ち運びができるキリムは、遊牧生活に欠かせないアイテム。母から娘へと女性たちによって伝承され、配色や文様、織り方、構成など、古くはその部族の特徴が表されています。
キリムに描かれた美しい色彩や素朴なデザインは、それぞれ織り手のセンスが活かされています。草木や大地、太陽や水といった自然の恵み、日々の暮らしの安全・安心を願う気持ちが織り込まれたキリム。その豊かな感性は、現代の暮らしにおいても新鮮です。
中近東では、近年、遊牧生活から定住に変化し、キリムも工業製品化が進み、昔ながらの手仕事による味わいのあるキリムを織る「織り手」が激減しています。
私たちROGOBAは、暮らしの芸術品としてのキリムをより多くの方に伝え、新しい価値を現代に生み出す活動を行なっています。
織られてから100年以上が経過したキリムを指します。単に古ければ古いほど評価されるものではなく、デザイン・文様のオリジナリティ、ユニークさと、織りの技術の高さ、および良好な保存状態によって価値は高まります。こうした希少価値あるキリムを、世界中のコレクターが探し求めています。
日本でも古くは戦国時代に豊臣秀吉の陣羽織がキリムで作られ、現在も京都の高台寺に保管されています。このキリムなどは典型的で、非常に美しく、歴史的にも価値のあるキリムです。
織られてから50年以上が経過したキリムを指します。遊牧生活を送る女性たちが、自身の生活に必要な道具として織り上げたキリムです。色は、天然染料だけでなく、その当時一般にも普及していた化学染料も用いて染め、文様は抽象的かつ幾何学的なものが多く、それらが全面に織られているのが特徴です。
織られてから比較的、年月が浅いキリムを指します。最近は、ウールを機械で紡ぎ化学染料で染めた糸を使い、手織りされたキリムが一般的になりつつあります。これらは安価ではありますが、経年変化によって退色したり、生地の劣化が起こることもあります。一方、ROGOBA KILIM のように【素朴な手紡ぎ・天然染料・優れた織り手】によって織られたものもあり、それらは年月とともに風合いが高まります。
ROGOBA KILIM は、現在では非常に少なくなった遊牧民の伝統的手法を正しく継承する織り手によって、
【素朴な手紡ぎ・天然染料・優れた織り手】の三要素の揃った、現在では非常に珍しい現代キリムです。
また ROGOBA KILIM は、キリムにとって最も大切な "糸の色の濃淡” と "糸の太さの大小” がつくり出す『織りの風合い ”アブラッシュ (abrash)” 』が特に美しい上質なキリムです。
アブラッシュとは、糸の色の濃淡・太さの大小がつくり出す風合いを表す言葉です。
例えば同じ赤でも染める環境(気候・温度)の違いによって、微妙な色の違いが生まれます。その色の違うさまざまな赤い糸を使ってセンスよく織り上げることによって、心地良い色変化が生まれ、キリムに奥行きを与え、一点ものとしての価値を高めます。
アンティークキリムやオールドキリムにも、アブラッシュは見て取れます。かつて織り手たちは遊牧生活の中で必要最低限の糸しか染めなかったため、キリムを織っている途中で糸がなくなった場合には、新たに糸を染め直しました。ところが自然の中での作業は、同じ材料を使っても毎回同じ色の糸はできません。その色の違いを、むしろ楽しんで織ろうとした遊牧民のセンスが、アブラッシュとなったのです。
ROGOBA KILIM では、そのアブラッシュが織り手によってより洗練され、キリムの風合いを豊かにする高度な技法として定着しました。
現在、アブラッシュをセンスよく表現できる織り手は大変少なくなっています。最近の化学染料のキリムでも色の濃淡が見られますが、それは糸を染める段階で色変化が起こるように染めているためです。消費者が求める本来のアブラッシュを表現したくても、センスと技術がない織り手にはできないため、前もって糸を段染めし、それらしく作るしかないのです。
ROGOBA KILIM を実際にご覧いただけば、単にアブラッシュを偽装したものか、糸を入れ替え織り上げた本来のアブラッシュなのかは一目瞭然です。
▲ アブラッシュの見えるキリム
キリムの文様にはさまざまな意味が込められています。
これらの文様は、厳しい大自然の中で
生活を送る遊牧民の女性が、家庭を守り、慈しみ、幸せを得るために織り込んだ、祈りの形です。
アナトリアの母神に由来する女性をかたどったこのモチーフは、女性と子宝のシンボルとして用いられます。「ハンズ・オン・ヒップ」。
多産、英雄的な強さ、権力、男らしさをあらわす三日月型をしたモチーフです。
極東アジアから伝わったこのモチーフは、一般的には“Ying-Yang”という名前で知られており、男性と女性の和合を表しています。
五本指や五つの点で構成されたこのモチーフは、五という数、例えば手の指の数が邪悪なものに対して防御の役割を果たすという、アナトリアの信仰に基づいています。手のモチーフは魔力や邪悪に対するものとして用いられ、櫛のモチーフは出産や結婚のお守りとされています。
第三者によって引き起こされる、危害や、障害、不幸、死といった災害を取り除くために使われるモチーフです。「イーヴィル・アイ」。
大切なものや自分の身を守るため、鍵をかけて悪魔、邪悪なものを中に入れないためのモチーフです。「フック」。
遊牧民が育てている牛(特に身ごもった牛)を、一番恐れている狼から守る願いを込めて使われるモチーフです。
鳥ほどいろいろな意味を持つものはありません。例えば、幸福、喜び、愛、死者の魂、女性、あこがれ、便りへの期待、パワーと強さなど、幸運から不運に至るまで、様々な意味を持つモチーフです。
人間の生活の中で最も大切な水を表すモチーフです。川の流れや雲、花瓶、水差しのモチーフは、それぞれ形は異なっていても、すべて同じ意味を表しています。
文様にはそれぞれ意味があります。
織り手は、その意味を自分のキリムの中に盛り込むため、その文様を織ります。
キリムは絨毯と異なり、デザイン画を用いることなく、記憶している文様をその時の気分・アドリブで織り上げます。
そのため、結果的に、織り手の個性が
文様(形)のプロモーションに表現されることになります。
同じように見える文様であっても、織り手のセンスによって文様がデフォルメされ、織り手のその時の気分、アドリブや個性で
変化・変形されています。そしてこれがキリム自体の個性となり、「一点物」であるための大きな要素となります。
また同じ意味を持つ文様であっても、時代や部族の違いによって文様の形は変化します。